祝福されし乙女

ラファエル前派の軌跡
昨日お話ししたロセッティが絵画化した詩をご紹介します

 

 

 

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
《祝福されし乙女》

 

天に召されし乙女は天の国の金の手すりにもたれていました
そのまなざしは たそがれの静かな水の淵よりもなお深く
手には三つの百合の花
髪には七つの星をちりばめ

たなびく裳裾に花模様のぬいとりはなく
ただ一輪の白い薔薇、聖母マリアの贈り物
神のつとめにふさわしく身につけて
肩にそって垂れる髪は熟れた小麦の黄色でした

乙女のまわりではふたたび結ばれた恋人たちが
いまは永遠に呼びかわしていました
互いの名を法悦の新しい名を
そして神のみもとへ昇る魂が次々と細い焔のようにそばをかすめました

すると乙女はさらに身を傾けました
天の国の囲いの外へ
もたれている手すりが胸のぬくもりであたたかくなってしまうほどに
三つの百合がさしのべた腕にそって眠ったように垂れてしまうほどに

日はすでに沈み 鎌のような月がまるで小さな羽毛に似て はるかな虚空に浮かんでいました
そのとき乙女は語り始めます 静かな空に
その声はさながら星が口々に歌う声のようでした

あのひとはまだ来てくださらないのかしら
きっとここへ来る筈なのに
天国で私がこんなに祈ったのに 地上でも
主よ、主よ、あのひとがあんなに祈ったのに
二つの祈りの強さに間違いはない筈
心配はいらない筈

あのひとの頭に光の輪がかかり
あのひとが白い衣をまとったら
私はあのひとの手をとって二人して光の泉へ行きましょう
川の流れにひたるように泉にひたって二人して神の御前で沐浴しましょう

二人して休みましょう
あの木蔭 あの生命ある神秘の樹の蔭
その秘密の葉むらの中にときおり聖なる鳩の気配がして
翼の触れるたびにひとつひとつの葉がはっきりとその御名を口にする

二人して尋ねましょう あの茂み
そこに聖母マリアがおわします
仕えるはしためは五人 その名は セシール、ブランシュリス、マドレーヌ、マルグリットにローズリス

あのひとはこわくなって黙っているかしら
そうしたら私は頬をあのひとの頬に寄せて二人の愛を語りましょう
恥ずかしがらず気おくれもせずに
マリア様は私の誇りをお認めになり語るのを許してくれるでしょう

お手ずから私たちの手をとって主のもとへ導いてくださるでしょう
すべての魂がひざまずき後光のついた無数の頭が一斉にひれ伏す主のもとへ
天使たちが迎えに出て歌うでしょう
琵琶や竪琴に合わせながら

そうしたら私は主キリストにお願いをしましょう
私たち二人のためにただ一つ
かつて地上でそうしたように
愛のうちに生きていくことだけを
かつてひとときそうだったように
いまからは私とあのひとと永遠に一緒にいることだけを

乙女は目をこらし耳を澄まし悲しさよりも優しさのあふれる声で

あのひとが来ればきっとそうなる

そう言って言葉を終えました
わななく光が乙女の方へと
天使が横ざまに強く飛ぶかとばかりに射しかかり
目に祈りを浮かべて乙女はほほえみました
でもたちまちにそのまなざしははるかな星々の間にかすんで行きました

とみれば乙女は金の手すりに腕を投げかけ
両手の中に顔を埋めて泣きました

 

 

 

 

絵には天国の宮殿の手すりから地上を見下ろし恋人を思う乙女の姿が描かれています
乙女が手に持つ百合と宮殿を飾る薔薇は聖母マリアの象徴とされています
恋しい人を想う憂いを帯びた表情が素敵です
地上の恋人も天を見上げ彼女を想う…

 

FrancescoDillon チェロの世界 AkiKuroda,Piano

箱根

祝福されし乙女

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